2013年10月28日月曜日

Beyond:Two Souls

個人的に PS3 世代最後の華と思っていた BEYOND: Two Souls 、クリアしましたのでご紹介。
 BEYOND: Two Souls はいかにも地雷っぽいタイトルですが、 HEAVY RAIN をプレイした人には鮮烈に焼き付いているであろうデベロッパ Quantic Dream の新作です。
耳馴染みの薄いデベロッパって人も多いでしょうが、高密度なポリ人形に人間らしい魂を吹き込むことに関しては Insomniac も Guerrilla Games も、 Naughty Dog さえも凌ぐ技術を持っています。
緻密で、強烈な説得力のあるグラフィックスで語られる物語、それが本作の魅力です。
列車からの逃走、そして森を逃げ惑うシーンはもの凄いですよ。
列車といえば UNCHARTED2 の列車の上で戦うシーンも、ゲーム史に残る屈指の名シーンでしたが、本作のそれはまた違った鬼気迫るものがあります。
特にプレイヤーと主人公たちを結びつけるその特徴的なインターフェイスと、ストーリーについてお伝えしたい。



HEAVY RAIN とはストーリーに一切関連がないものの、ゲームシステムはよく似た特徴的なものです。
全く同じではなく、部分的にはシェイプアップされ、部分的には複雑化しております。
システムはまず誤解を恐れずにいうと QTE です。「(Q)急に(T)タイムギャルみたいになって(E)エッてなる」アレです。

QTE なんて嫌だ

QTE といや God of War やバイオハザード4-6 で悪名高いあのシステムです。
企画屋がやりたがる「僕の考えた最高のシステム」としてプレイヤーには散々嫌がられる QTE ですけども、 Quantic Dream が完成させた一貫性のある QTE はそれほど反射神経を求めず、失敗がなく、充分対話的なものです。

一例を挙げるなら、 QTE が文脈を無視して唐突に始まり四角ボタンの連打といった、これまた意味の分からない入力を強制されるものならば、 Quantic Dream のそれは「左手ならば L1, 右手ならば R1」と対応がある程度決められており、タイミングは概ねシビアではありません。
HEAVY RAIN においては、「朝目覚めてベッドから出て洗面所に行き、歯を磨く」といった一連の動作を、この QTE を用いて行うことで、プレイヤーは主人公の操り方を学びます。学ぶといっても記憶する必要はなく、なんとなく一体感を得るわけです。

更に、 BEYOND においては QTE 以外の操作、自由な操作によるストーリーへの介入が強化され、ほぼいつでも自由な移動を行い、シーンによっては乗り物を操縦することもできます。
HEAVY RAIN でも自由な操作ができるシーンは多かったのですが、今作は文字通り飛躍的です。霊体を操ってシーンを飛び回れるのですから。


霊体?

本作の特徴は、超能力を持った少女ジョディ(主人公)に取り憑いた、二つ目の魂(仮にエイデンと呼ばれている)を操ってストーリーに介入できることです。
エイデンは敵と見做した人物を直接殺害できます。利用価値のある人物はオレンジ色に見え、自由に操ることができます。
更に残留思念の読み取り、回復、オブジェクトの破壊、操作など。
霊体ですので、あまりジョディから離れることはできませんが、あらゆる障害物を通り抜けることができます。
非力なジョディに代わり、エイデンを使って障害物を取り除いてあげましょう。

ちなみにエイデンを操作する場合、 QTE は発生しません。自由移動のみです。


物語

HEAVY RAIN は誘拐された実の子供を助けるという、解りやすい目的を解りやすく(概ね)時系列でプレイするゲームでしたが、今回は海外ドラマ的にエピソディックな感じになっています。 LOST なんかを思い出すと似た雰囲気があるのではないでしょうか。
主人公ジョディの半生を幼少期から青年期(?)までが必要に応じて断片的に呈示されます。
サスペンスよりもアクション、ホラーや青春の断片であったりします。

いつからかエイデンという正体不明の霊体を宿した少女ジョディは、両親とも引き離され DPA という国防の観点から超能力を研究する研究所で実験を繰り返しています。
プレイヤーはゲームを開始してすぐ、超能力とはエイデンが起こしている現象だと理解できるでしょう。だってプレイヤーが実際に操作してそれを起こすんですから。

エイデンの神秘性は早々に失われてしまうわけですが、話のメインはそっちじゃありません。
もちろんエイデンという存在が示唆する"インフラワールド"(霊体の住む、いわゆる死後の世界)と、そこへのアクセスというのはストーリーのメインラインとして存在しますが、ジョディは無関心です。周りのキャラクターがインフラワールドに夢中だから何かと因縁はでてくるのですけど。

なので、ストーリーは飽くまでジョディという女性の人生を、その挫折や苦悩、時には自分のために死体の山を築いて語られます。
TLOUS のように強固に個人的な物語を体験したあとでは少々発散して見えるかもしれません。なにせグレたと思ったら CIA に就職したり逃走して皆殺しして自分探しの旅を始めたりとハチャメチャ人生ですからね。

そして何より重要なことは、解りやすいゲームオーバーがないということです。
何かに失敗しても、 ゲームオーバーですといわれてやり直すということが、このゲームでは(HEAVY RAIN もそうでしたが)ありません。失敗しても失敗したなりにストーリーは続いてゆきます。
だからもう否が応でも必死にならざるを得ません。


不満なところ

オートセーブなのはいいけど、止め時がみつかりません。
それからオマケでついてくるスマホモード。これはスマホと接続するとスマホに面白いインタラクトがあるものかと思っていたんですけど……どうやらスマホをコントローラとして使うモードでした。
簡単操作がウリらしいのですけど、さっぱり意味がわかりませんでした。
一番最初の ESP 実験で、透視するどころか椅子に座る事すらできない始末。即刻止めました。

物語中、時折現れるインフラワールドから来るモンスター。
最初のうちはいいんですけど、こいつらがあんまりバリエーションがないし、説得力もいまひとつ……という感じですね。

グラフィックスは凄くいいけどフィジックスはあまり良くない。
別に気になるほどじゃないけど……たまに特に乗り物に乗ったときに顕著ですね。
エイデンの力で重そうなものでも軽々と吹き飛ばすのは楽しいのですけど、小さいモノがあんまり派手に壊れないと「アレ?」となっちゃいますね。