2015年8月9日日曜日

ジュラシックワールド観て来た(最高)

ジュラシックパークのまともな続編が出ないとお嘆きの諸兄。
あれもこれものリメイクラッシュの中、なぜジュラシックパークがリメイクされないのかとうち震えている諸兄。
3D 映画を結構制作しているのになぜジュラシックパークを 3D 化しないのかと憤懣やるかたない諸兄。

新作、ジュラシックワールドは諸兄らが待ちに待ったそれ、正にそれだということをまずお知らせしたい。
このような最高の続編を観られる幸福に乾杯。

いえ、慧眼なる諸兄らにあらせましては、予告編を見終えた瞬間に、椅子をガタと言わせて立ち上がったことでしょう。
これまでの続編がまぁ、ファンとしてはクソだとゴミだとは言い難いのですけれど、控えめにいって大変ガッカリな出来だったことは認めます。
次もきっとそうであろう、と思いながら予告編が始まるのを目にし、咄嗟に 「またやるのか。懲りないな」「もしかするとジョークムービーなんじゃないか」と思ってしまったほどであります。
ですがどうでしょう。
舞台はあのコスタリカ、イスラ・ヌブラ島。
二十年後、オープンした人気リゾード「ジュラシックワールド」。

来た。
来るべき時が。

スピルバーグは「シリーズとして継続可能な脚本が書けた者に続編を任せる」と言いました。
けれど、皆解っていたはずです。我々が本当に求めていたのはそうじゃない。
サイト B や、キャラクターは名優揃いで惜しいけど、昔の恋人とかそんな掘り下げは全然求めてない。

考えてもみてくださいよ。例えば一作目が素晴らしいメジャーリーグベースボールの話だったのに、出てきた続編がなぜかスポーツのための先進トレーニング研究所の話だったとか、監督の娘が体操の選手になって鉄棒で 160km/h のストレートを蹴り上げたとか、カーブが来たら必ずホームランを打つ強力な打者がマイナーリーグから来たけど誰もカーブを投げないとか、そんな話だったらどうします?

えっ、ナニコレ、外伝ですか?テレビシリーズですか?

ってそうなりますよね。
まぁ、日本の原作付き実写版とか、そういうポカを毎回のようにやってますけど、ハリウッドでもやるんだな〜よっぽど強いビジョンがないとこうなっちゃうんだな〜という学びはありますね。

皆解っていたはずです。
我々が本当に求めていたものは、

イスラ・ヌブラ、
そして恐竜のテーマパークなのです。

いわば念願にして唯一の正当続編、それがジュラシックワールドです。
夢のあるパークのプロップ、わくわくする設備の数々、明るいところで恐竜と戯れ、ジャングルを彷徨い、海岸線の絶壁、丘陵地帯のブロントサウルス……。
恐竜は登場人物の一部であり、 パークと島はもはや主役といっていいものです。
それらが 3D と最新の技術で、凄まじい実在感を持って目の前に展開します。

まず本作を未見の方には、観ようかどうか迷っている暇があったら観に行くべきだということと、シリーズ前作までを知らない方にはこんなものを読むよりさっさと劇場に行ってスクリーンの全てに集中したほうが有意義だということ、そして 3D で観るかどうしようか迷っている人には 3D で観るべきだということを強く推奨します。
字幕かどうかについては、そんなにシビアな演技はないから、タレントの吹き替えでない限りどちらでもよいと思います。より絵に集中できる吹き替えも検討できます。
前作までを観てからにすべきかどうかについては、初代のオマージュがとても多いので観ておいたほうがより楽しめると言えます。が、単なるオマージュではなく、現実の時間の流れに意味があるので、初代をリアルタイムで観ていることが重要です。
だから、リアルタイムで観ていないのなら、わざわざ復習してから劇場に行く必要はないでしょう。本作だけでも完成されたエンターテインメントなのですから。
というか、まず本作を観よう。それから初代を観て、また本作を観たらいいのです。
重要なのは二十年の時間の流れ。それがないなら多少順番が前後したところでどうってことありません。

しかし憂慮されるのは、いかんせん微妙な続編をこれまで続けてしまったことでトレイラーや宣伝の、たとえば「新種」であるとか、キャンセルされた「ジュラシックパーク4」のプロットであるとか、そういう部分が鼻について期待が薄れてしまい、まぁ時間があったら観てみよう、くらいになってしまうことです。ファンであるが故に、というわけですね。

そんなファン諸氏に対して、安心したまえ、これは俺達の求めていたジュラシックパークだよ、ということがこの記事の目的であります。
以下、ネタバレがないように気をつけつつ、シリーズ四作目「ジュラシックワールド」の見所の一部を紹介します。
一方で、初代、二作目、三作目のネタバレには全然気をつけてないのでよろしく。
気をつけるとはいってもトレイラーや CM で解るくらいのことは書いちゃってますし、できれば何にも前提知識なく観てもらいたいなと思っております。




コスタリカ沖の霧の島イスラヌブラに建設中だったジュラシックパークの惨劇の後、インジェン社の経営は悪化しマスラニ傘下に組み入れられており、ハモンドはパークの技術とウー博士、そして経営権をマスラニに譲っていました。
マスラニはパークの経営権だけでなく(映画版の)ハモンドの思想も受け継いでいるようで、ただの成金経営者ではなくて中々好人物のようです。
ただしこのへんは完全に映画オリジナルの流れで、二作目(ロストワールド)、三作目(ジュラシックパーク4)を観てないとわからないところです。原作のハモンドは基本金の亡者でしたしそもそもロストワールドの軍人同様、川で小さい恐竜(たしかコンプソグナトゥス)に食われて死んでいます。
一方ウー博士は生き残り、出世しておりましたが、顔は初代からあまり変わっていませんね。

二十年後、マスラニはイスラヌブラ島に「ジュラシックワールド」として遺伝子から復刻した恐竜のテーマパークを開園し、一日二万人にも上る集客を誇るまでに成功させていました。
ランクルではなくモノレールとハイテクのジャイロやカヤックを使った遊覧ルートとモダンになり、ビジターセンターも T-Rex の骨格模型ではなくディロフォサウルスなど色々な恐竜の立体映像に。なんと Mr.DNA の展示も健在!
そして前回の失敗から、恐竜は逃げるもの、トラブルは起きるもの、進化には勝てないという哲学をスタッフの末端にまで叩き込んでおり、 パークは格段に安全で快適になっておりました。
しかし映像を観ると……二万人くらいでちょっと混雑しすぎじゃね?と思いますね。島全体を使ったパークですが立ち入り可能なエリアは南部の僅か。 大部分は恐竜の飼育と研究のためのエリアのようです。
イスラヌブラ島はダイヤモンドのような形状をしており、西部と北部に肉食竜の飼育施設、中部に翼竜ドーム、南部の一部がアトラクションになっているようです。観客は南端の入り江へフェリーでやってきます。

更に、その後の研究でジュラシックワールドでは新たな知見が得られておりました。
一つは遺伝子の掛け合わせで新種を作り出して集客力を高められるということと、ラプトルほどの知能があれば飼い馴らすこともできるということ、そして隔離して飼育した生物にはある傾向がある、ということです。
設備も、恐竜も、(かなり無茶しているようだけど)資金、スタッフも全てがパワーアップ!それがジュラシックワールド!
そのスタッフの二人が主人公です。
一人は海軍からラプトルの管理に雇われたオーウェン(Mr. グレイディ)。初代でいう飲んだくれマルドゥーンと同じ仕事をしていますが、彼は恐竜をよく知って愛しており、その接し方はかのグラント博士よりも手慣れております。
専門はラプトルで、グラント博士のような子供っぽさはないけれど、草食竜との絡みはグラント博士よりも一段深い恐竜への愛情を感じさせます。
子供とも機械とも上手く付き合ってゆける中々の世渡り上手。
なぜ海軍をやめたのか語られませんが、会話の端々からするとどうやら海軍内での競争についていけなくなったようです。

そしてもう一人の主人公は広告マーケティングの責任者クレア。
彼女は恐竜のことを殆ど知らず、パークの研究からも蚊帳の外に置かれ、ただただ集客のために忙殺されている現場の人。
字幕では出てないけどかなり早い段階で「あなたのラプトル」という言い方をしていることからも、その辺りの事情についてだけはオーウェンから聞いていたようです。
クレアは姉(しかも離婚調停中)の子供、つまり甥っ子の兄弟、ザックとグレイをゲストとして預かることになりますが、忙しさのため秘書のザハに預けきりにしてしまいます。
グレイは恐竜好きで詳しいが子供、ザックは高校生にもなって反抗期真っ盛り。
この辺はハモンドと二人の孫、レックスとティムをそのまんまなぞる形になっています。
これに限らず、本作の登場人物は概ね初代の誰かの立場を踏襲する形で配置されています。なのでそれぞれの役割が解りやすいです。
もっともザックは IRIX よりは Android 派、ましてハッカーでもなんでもない普通の高校生ですが……。

叔母であり経営陣であるクレアは、甥っ子にも嫌われ、姉にも嫌味を言われ、目先の利益ばかり追求し行く先々で総スカンを食らうのですが彼女は決して鼻持ちならない人物ではないです。
ドジッ子全開ですが途中からサトラー博士の服を真似をしたりかなりお茶目です。

クレアの目線から描かれるパークの内情は決して単純ではないようですね。
エキセントリックな CEO, 遺伝子操作に反感を持つスタッフ、でもそれをしなければただの動物園になってしまうというジレンマ。
他にも……まぁ、色々な問題があるようなのですが、こうした複雑になりがちなところが面倒にならない程度にストレートに解りやすく話に組み込まれているので、鑑賞する上で邪魔になることはありません。

そして一番の問題は、遺伝子組み替えで作られ、三週間後にお披露目を控えた新種「インドミナス・レックス」の存在。
新種とか(話の出来的に)もう悪い予感しかしませんよね。僕は「また余計なもの入れやがって」と心配していました。
ところがどっこい、この新種は、凄く使える奴でした。
何をしても映える。凄い絵になる。
CGI で描かれたでっかいトカゲが、こんなに恐ろしい演技を見せてくれるなんて想像できませんでした。迫力は、勿論映画館の音響っていうのも大きいのでしょうが、その怖さは、例えるならダークナイトのジョーカーにも近いものを感じます。
噛み方一つとっても、いい意味でいちいち恐竜らしくない。
知能も破格だが、それが荒唐無稽にならない程、登場の仕方が様になっている。
T-Rex の前足の弱さのような脆さもなく、動くものしか見えない視力といった弱点も持たない。

恐竜の種類といえばシリーズ中、ちょっとずつ増えてきて、その度ちょっと上滑りしている感じがあったけれど、今回は描かれ方もとてもよいです。
初代ではたとえば、トリケラよりもトリケラと戯れるサム・ニールを主体にしていた印象がありますが、 本作ではずっとはっきりと恐竜を捉えています。
ガリミムスの群れやブラキオサウルス、例えばプテラノドンにいじめられるトリケラトプスの子供とかすごく可愛い。
そしておなじみのラプトル同士の掛け合いなど。ラプトルの鉤爪があまりフィーチャーされなかったのは何か理由があるのでしょうか。新しい学説で実は爪は大したことなかったかも知れないとか、そういう。本作では新しい学説に基づいて変更が加えられているようで、登場しなくなった恐竜などはその兼ね合いが大きそうです。
元々初代からラプトルはかなり愛嬌のある描かれ方をしていたけれど、今作では表情まで伝わってきそうな気迫がありますね。
彼女らの狩りの仕方について、初代からずっと御都合主義過ぎるんじゃないかという批判もありますが、集団の狩りをする計算高い生き物ということは作中でも繰り返し語られるところでして、不合理はありません。
三作目に華々しく登場し、あまり活躍しなかったプテラノドンなどの翼竜もちょっとやり過ぎなんじゃねってくらい大活躍します。
ただうざいだけでなく、遠くからでも絶望感があってスピーディー。彼女らの性質がとても生かされていました。
特筆すべきは新登場のモササウルスです。
途轍もなくでかい、クジラのような水棲の恐竜。
これはトレイラーで観て「あーまた使えなさそうなの出るなぁ」くらいにしか思わなかったんですけど、これが実にとんでもない。
よく考えたなぁ、こんなの。今作のスタッフは、恐竜が好きで好きでたまらないんだな。

初代以外はずっとホラーのような暗い場面でのショッキングな襲撃ばかりでしたが、今作は明るい、成功した恐竜パークとしてもずっとしっかり描かれています。
恐竜ばかりではありません。ヘリのシーンが何度も登場しますので、あの入り江や、ランドマークになった滝や、懐かしの雄大な尾根からの丘陵地帯も 3D で堪能することができます。風景どころか空気感だけでも懐かしさがあります。真っ暗な中で施設や車の照明が灯っているカットだけでもちゃんと「ジュラシックパークっぽい!」となるんだから不思議なものです。
初代だと、変電所の入り口でラプトルとサトラーが追い掛けっこするシーンなんか霧が濃過ぎてちょっと安っぽいというか、セット狭いんじゃね?という感じがあったのですけど、今作はそういうこともなく空間と空気が描ききられています。
加えて、人間に対する暴力も容赦がなくなっています。
いえそもそも狩りで手加減などしてくれないので、その意味じゃ元々容赦ないんですが、描き方の話です。
初代などは人間の捕食シーンもどちらかというとコミカルにぼかしていたし、アーノルドのように腕だけになって登場したり、そもそも死んだのかどうかさえ解らない人物さえいました。
そういうところはかなり減って、グロくはないものの比較的苛烈になりました。

今作は、初代の朝のブラキオサウルスやハモンドのノミのサーカスの話のような、しんみりするシーンは殆どないけれど、これでもかとオマージュが詰め込まれた上、素晴らしい恐竜パークとその熾烈なパニックが実在感をもって詰め込まれた最高傑作です。
恐竜はただの猛獣ではなく、個性的で物語の担い手として完璧に組み込まれています。
昼も夜も広々と描かれた島は空気感まで伝わってくるようです。
全部見所ですが、こうしたところに注目するとより楽しく観られるのではないでしょうか。
あ、そうそう、これは完全に余談ですが、もう一つ書いておくと松本そっくりの浜田でちょっと笑いました。