2018年7月18日水曜日

ジュラシックワールド FALLEN KINGDOM

7/13 から上映開始だったので観てきました。
概ね分かりやすいエンターテインメント作品で、シリーズに特別思い入れのない人でも軽薄に楽しめる作品だったと思います。

今作ではあの初代ジュラシックパークとジュラシックワールドのあったイスラヌブラが火山活動によって致命的なダメージを受け、そこから恐竜を助け出したはずが……というストーリです。
前作のラストでモササウルスに食べられてしまったインドミナス・レックスの骨を回収する怪しい団体の活動で映画はスタート。
前作、「雨のシーンがない」という(数少ない)不満に応えるかのように、これでもかと雨が降っています。

前作、マスラニ社の財務を担当していたクレアは今や恐竜を守る団体の理事でしたが活動は暗礁に乗り上げていました。
イアン・マルカムの証言で、国はイスラヌブラの放棄を決定したからです。
これに対してロックウッド財団の代理人ミルズから資金提供の申し出があり、クレアはオーウェンを連れてイスラヌブラに乗り込みます。前作のラストで自然に帰っていったラプトルのブルーを保護するためです。

前半のシーケンスは、まぁまぁよくできてました。
イスラヌブラがジュラシックパークの陰の主人公と言い切る僕のような人間からすれば、イスラヌブラの破壊は痛ましく、恐竜たちの第二の絶滅はとても悲しいものでした。

なので、観に行く価値はあります。
迫りくる炎と煙の中、立ち尽くすブラキオサウルスの姿は自分で観ないと意味がない。
これは観るべき映画です。
しかしながら、素晴らしい二時間を過ごせる映画かと期待すると、そこまでのものではありません。
個人的な感覚では、まあまあ面白いけど、大嫌いな映画です。

後半のクソっぷりでもって前半の素晴らしさが色あせるわけではないので、平均的な点数を付けることは好きではありませんが、「詰め込み過ぎた」「おかげで編集もクソ」というところは明らかに製作の落ち度ですんで、少し厳しめにしてもいいでしょう。

前作ジュラシックワールドを 100 とすると本作は 55 かいいとこ 60 です。今後字幕版を観たらちょっと上がるかもしれませんが、おそらくそれ以上にはなり得ません。
素晴らしい前半にも、落ち度は多く、話が頭に入ってこないくらいには目立ちました。
しかしながら、初代ジュラシックパークを 100 とした場合のロストワールドは 25 くらいなので、それから比べれば大躍進であります。

いいですか。ロストワールドよりはマシです。

本作は、ロストワールドの精神的続編、オマージュでありながら、ロストワールドを超えた。
それは大いに評価すべきポイントだと思っています。

素晴らしい点は

*ブルーがかわいい(設定がブレてる気がするけど)
*ラプトルたちが尊い(捏造気味であるけれど)
*ブラキオサウルスが泣ける
*ティギー(パキケファロサウルス)がいい味出している
*荒ぶるイスラヌブラが壮大
*モササウルスはやっぱり最高
*ある意味原作のラスト(の状況)に一番近い

とまぁ、結構あるんです。

ロストワールドの精神的続編と言い切る理由はいくつかあります。
イスラヌブラの外に恐竜が出ること、イアンマルカムが登場すること、(マルカムではないが)娘との関係性が描かれること、暗いシーンがとても多いこと、恐竜ハンターが活躍すること、コンプトゥソグナトゥス、パキケファロサウルスが登場することなどです。

で、ここからネタバレです。
まだみてない人は見ちゃだめですよ。

といっても本作、ストーリーライン上別に隠さなきゃいけないことはそんなないと思いますけどね。
くだらない話なんで。








ここからネタバレです。
本作は、あのイスラヌブラが噴火で崩壊するということで、まぁ、観る前からあまり高い期待はなかったのですけど、それにしても酷いなーと思うのでいくつか書かないと気持ちの整理がつかない。

まずオープニングが酷い。
荒れ狂う海なのにやったら綺麗な海底を、今時珍しいくらいわかりやすい CG の潜水艇が進んできます。
このシーン、こんな尺使う必要あったんですか。
それで地上。荒れ狂う海の迫力は良し。雨も良し。
地上のチームを狙う T-REX の影。まぁ、お約束ですね。
でもこのティラノサウルスは、音もなく一瞬で背後まで距離を詰めてきます。
お化けじゃないんだから。せっかくの巨大な恐竜なのに実在感皆無。
ヘリコプターで逃げるところも、 3D 映画ってことを全く無視した細かいカット割りで何だろうなって思いますよね。
それで仲間を食われたチームメンはまるでアホみたいなオーバーアクト。
初代ジュラシックパークのオープニングの現地作業員を見習ってください。
ガム食いながら、ラプトルの檻を見ているだけなのにあの緊張感。
湾から逃げるモササウルスだけが素晴らしかった。

前半のイスラヌブラのシーンは大体素晴らしいんですが、あちこちおかしなところがあります。
ザックたちの乗っていたジャイロスフィア以外は全部基地に戻っていたはずなのに、なんであの平原に一台だけあったのですか。
ザックたちのはインドミナスに壊されていたはずです。あんなところに、気密性を維持したジャイロがあるのはおかしいですよね。
ブルーを確保した現場にあったひっくり返った初代のランドクルーザーもちょっと微妙ですよね。
まぁ、細かいところに目を瞑れば、良かったです。
特に第二の絶滅に瀕した恐竜たち。炎に巻かれ、船を見送るブラキオサウルス。
あんなに大事にしていたラプトルを撃たれる絶望感。
輸血シーンも、ジュラシックパークらしさがありました。

しかし後半、舞台がロックウッド邸になると話は大きく変わります。

前作は T-REX をベースにしたインドミナスが登場しましたが、今作はラプトルをベースにしたインドラプトルが登場します。
あれ? でもインドミナスは T-REX がベースじゃなかったし、むしろラプトルに近かったはずでは?
今作のインドラプトルは、ブルー達が忘れてしまった狡猾さを持った殺戮マシーンです。
が、このインドラプトルがまた実に、良くない。

インドミナスは走って良し、撃たれてよし、食って良し、食われて良しの最高のパフォーマーでした。
前にも言いましたが、ただ居るだけで絵になる。
コミュ障で食事のマナーもなってないとか酷い言われようでしたが、アイツはヒース・レジャーのジョーカーに匹敵する最高のヴィランでした。

インドラプトルはだめです。
まずラプトルの癖に図体がでかい。シルエットは不気味でとてもいいが、活躍する場が狭い。
笑うシーンがありますが、殺戮マシーンの癖に、何のために表情筋発達させたんですか?
SF としても成立してませんよこんなの。
まぁ、映画館で観客にはウケていたので、エンタメ作品としたら良いのでしょうが、僕は許せません。
動きや狙いも、何がしたいのかさっぱりわからず、ただ製作サイドの都合であっち行ったりこっち行ったりしていて、ただ不気味な舞台装置としてのみ存在していましたね。
あんなに暴れたのに結局戦果は、ケンと地下オークションの関係者四名くらい。 2800 万ドルが聞いて呆れる。
インドミナスは、ただ食い散らかした痕跡を見せるだけで、サトラー教授のコスプレをしたクレアの SAN 値を 20 くらい削る迫力があったというのに。

本作はシリーズでは珍しく人体損壊描写がありましたが、どういうわけか例によって流血はなかったですね。
インドラプトルの鉤爪が刺さってクレアが微妙に怪我するシーンがありましたが、何ですかね、あれ。何か重要なシーンだったんですか、あれ。笑いそうになりました。

ロックウッド邸でのインドラプトルとの追いかけっこは、本来もっとスリリングになって然るべきシーンですが、まったく退屈でした。
前半にロックウッド邸のシーンが少なすぎます。特に外観で、尖塔がどこにあって中庭がすごく高いとか、博物ホールの天井がどうなっていて、メイジーの部屋がどこにあってエレベータとの位置関係がどうとか、それを知っていたら、このシーンはもっとスリリングになったろうに勿体ない。
例えば監督がフィンチャーだったら、絶対そういうとこ効果的に見せるじゃないですか。
本作はまるっきり場当たり的で散発的。
恐竜たちも、どっから出てきたとか、どこに入ってた?とか、そんな疑問ばっかり気になって内容に集中できない。
とにかく雑。

インドラプトルの最後も、意外性の全くない雑な死に方で逆に驚いた。
ここはティラノサウルスの代わりにブルーが活躍しますんで、良しとしたい。
シリーズにおける、ラプトルの攻撃にはある法則性があって、基本的に味方よりも人数の多い敵は襲わないということです(ロストワールドあたりで若干怪しいとこもあった気がしますが)。
だからブルーが果敢に戦ったことは意外ではないものの、飛び掛かる姿には胸に来るものがありましたね。
ロストワールドで回し蹴りを食らってノビていたあの間抜けな生物ではない!

そして物語の終盤、謎だったメイジーが活躍します。
唐突に漏洩した青酸ガス(説明なし。キルスイッチとして用意されたもの?)によって地下の恐竜たちが全滅するかどうかという手に汗握るシーンで、メイジーがある決断を下します。
理由は、彼女がクローンだったからです。

前作ではインドミナスの遺伝形成がサイエンスミステリであり、歯の数が合わないという一点突破によってティラノサウルスの加勢をとりつける決断につながるという太いストーリーラインがありました。
今作では、ロックウッドの孫、メイジーの出生の秘密がミステリでありましたが、 まぁ、ぶっちゃけ彼女は事故死した母親をオリジナルとした、クローン人間なのです。

で?

っていうところなのですが、それがここで彼女の判断に影響するわけです。
彼女は恐竜も同じクローンであると言います。

……で?
観客は誰も、遺伝子技術によって復活した恐竜をクローンだと思ってないでしょうよ。
クローンだとかどうでもよくて、ただの生き物と認識してるからラプトルの兄弟がかわいく、第二の絶滅があんなにも悲しかったのです。
我々は遺伝子操作されたインドミナスさえ受け入れました。クローンだとかどうでもよくないですか?
ねぇ脚本の人?
今そこを強調して何になります? メイジーにしても自分がクローンだって、ついさっき世間話のついでにポロっと漏らしたのを聞いただけなんですよ?
ここが、本作の最大にして最悪の致命的なミスです。

なんでこう雑なんでしょうか。思えば本作、パンフレットもなんか変です。
「ヘンリー・ウーを演じた B.D. ウォンのインタビューによれば、彼の中ではインドラプトルは未完成のままなんだ」ってスタッフの証言がありますが、ヘンリー・ウーは劇中で何度も「インドラプトルは未完成だ」って主張しています。
心中どう思ってるかなんて関係ないです。はっきりセリフになってるじゃないですか。
ちゃんと脚本読んで、内容理解して作ってます?

そして、今まで「マッドサイエンティストではない」、科学者としてシリーズに登場してきたヘンリー・ウーも、人間に殺されてしまいます。
最後にウーは唐突になんかのスイッチが入って、マッドサイエンティストの一面を覗かせます。
今まで実利を求めるリアリストとしてふるまってきたのに、最後にブレブレになって、特に意味なく人の手にかかって死ぬ。何でしょうね。せめて恐竜に食われろ。
脚本のやっつけさ加減がありありと伝わるワンシーンでした。
まぁ、もっとも本当に死んだかどうかなんてわかりゃしないですけどね。

そういえばインドミナスの骨を使った兵器転用計画はどうなった?というと、これはティラノサウルスに踏みつぶされて文字通り蹴散らされてしまいます。本当にオープニングのシーン、必要だった???

こうして悪党はみんな死んで、恐竜たちは野に放たれていきます。
サーファーの間から、波間に映るモササウルスの影は、今作屈指の素晴らしいシーン。
荒野を見下ろすブルーも大変感動的。
ロストワールドでも恐竜は本土に来ますが、最後はハモンドの厚意によって返されます。何と厚かましくて押しつけがましい最後でしょうか。
それに比べりゃずっとずっとマシな最後です。

原作ジュラシックパークの最後には、島から脱出した二頭のラプトルについて触れられます。
パークの恐竜たちは、必須アミノ酸のリジンを生成できないキルスイッチを組み込まれたせいで、人間が島を放棄したことで第二の絶滅を迎えるのですね。
ところが、二頭のラプトルは外部からリジンを自力で補給し、強く生きる道を見つけてゆくというストーリーでした。
第二の絶滅、それでも恐竜たちは生きる道を見つける。
ハモンドもヘンリーも死亡、マルカム死亡(実は生きていた)、傲慢な人間たちは全員死亡。(といっても原作のヘンリーは主任研究者じゃないし、犠牲者サイドに立って結構健闘したような気がするけど、映画では完全に傲慢サイドに振られていた)
これがジュラシックパーク原作の描いた姿です。
本作は、とんでもなく雑なエンターテインメントに振られた駄作ですが、少なくともこの重要なモチーフは完全に描き切った。
ハモンドの気まぐれでイスラソルナに移されたり、島に強制送還されたりしていない。
この点は、本作の良い点に数えてもよいと思うのです。


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