RX-1R。
基本的にはコンデジサイズのボディにフルサイズセンサーと超解像のカールツァイスゾナー T* レンズを搭載した RX-1 と同様な仕様で、価格帯も同じ。ですので RX-1 はディスコンにならず並売されるそうです。
バッテリの持ちも同じように悪いみたいですね。
何が変わったのかというとローパスフィルタがなくなっただけです。
ローパスというのは別名ハイカットのほうが解りやすいかもしれませんが——入力信号の中からある閾値に対し高周波成分をカットし、低周波成分のみを通すようなフィルターのことです。カメラの場合は撮像素子の前に光学的なローパスフィルターが存在します。
ここでいう高周波とは急激な色の変化のことと思ってください。
ローパスフィルターといえばお解りのように、これは何らかの積分器です——信号処理においては。
光学的なローパスフィルターの構造は全く異なり、たとえば透明なフィルムに日焼け止めを塗ったようなもので、その利得や特性を計算することは同じようにいきませんが、大雑把には似たような働きをします。
なぜこのようなものが必要なのかというと、不快なエイリアッシングを抑えるためです。
デジタル画像では一般的に入力のアナログ信号をサンプリング周波数に従って量子化することでデジタル信号へ変換しますが、サンプリングの間隔を無限に小さくできない限りは急激な値の変化を正確に補足できません。
だからこれは、センサーの苦手な非常に高い周波数をカットすることで、モアレや偽色を抑えて見た目に奇麗な映像を得るためのものです。
(さっぱりわからん、という人にたとえで言うと、一日一回毎朝アサガオの観察日記を付けて成長度をグラフ化していたところ、前日つぼみだったのに今日はもう花が満開だった場合、これは昨日の何時につぼみが開き始めて何時に満開になったのか解らない状態であります。けれど、グラフに書いて線で繋げてしまうと、そのグラフだけを見た人にはまるで昨日の午前11時につぼみが開いて午後3時に満開になったとか、そういう誤解を与えてしまいます。ゆっくり変化する(=低周波)の場合はそれで大体問題ありませんが急激な変化(=高周波)の場合には、まったくアテになりません。
こうした不正確な値を繰り返し受け入れていると、各信号を総合したときにありもしない幻の値が出現することがあります。
同じアサガオを、微妙にずれた時刻で複数名が観測していたとしたら、それらのグラフをみた人にとってはアサガオの満開時刻がやけにたくさんあるという不可解な事態が起きてしまいます。
これをエイリアッシングと呼んでいます。写真でいうとモアレやエッジ付近での不可解な色の変化などの不快なノイズのことです。人間なら変なグラフを見ても丸める動機も知識もあるのですが、機械は値に特定の意味を見いだして推測を立てたりはしないので、これ以降は信号処理プログラムの出番となります)
しかしながら、高解像度センサーや高い分解能を誇るレンズを使ったデジタルイメージングにおいては、そのような急激な信号の変化こそが興味の対象です。
そこでローパスフィルターを取っちゃおうぜ、という人は結構いるわけです。
実際に取っちゃいましたみたいな玄人向け製品も Nikon D7100 や Sigma DP など去年くらいから結構出てきています。
センサーの解像度が高いということはそれだけサンプリングが正確に近づくので、技術的観点からすると正しい行動だと思います。
いわば、アサガオの成長が早過ぎて日記に書きづらいから日陰に置いて育たなくしようぜ、みたいな対策は科学的にはとんでもないことです。
でもカメラを使うのはアーティストですから、別にそれでいいんだとも言えます。
——というわけで——。
- 解像度が充分上がったからローパスフィルターはもう要らないよ派
- サンプリング間隔を無限に小さくできない以上、ローパスフィルターは必要だ/あったほうがいいよ派
という二つの意見があって、血で血を洗う抗争になることも特になく、まぁ両方あればいいんじゃねというのが主流な気がします。
単に好みの問題ってわけでないにしても結局、被写体によるんですよね。
ローパスフィルターのある RX-1 と、ない RX-1R が同時に市場に存在できるわけです。
いずれにせよ玄人向けのプロダクトだと思いますし、玄人向けと更にマニアックな玄人向けということになってしまっていやこれはアツいんじゃないでしょうか。
いや、たぶん売れないと思うけど。ほんと、こんな冒険ができるなら DI ってやけに健全な市場だなぁって書いててそれはないって自分で思うけど。
レンズの供給能力はかなり小さいし、作りきりでいいやということなのかも。そうなら逃すと手に入らない系ですかね。
どうぞ好きなほうを選んでください。
アサガオの観察日記かー懐かしいなぁ、と思った人にはこちらも。
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