2013年6月29日土曜日

The Last of Us

The Last of Us。 略して TLOUS。

もう15時間くらいやってますが終わりが見せません。
始めは9時間くらいのボリュームかなと思ったんですが……大作ですね。この超絶なクオリティでボリュームまであるとは……。
おーついにクライマックスかーと何度か思ってもそれでは終わらず、次々とハードな展開が——。
Z指定のホラーアクション、いやステルスサバイバルアクション……まぁ色々と表す言葉はあるでしょうけれど、僕の言いたい事はたった一つだけ。

好みの問題? そりゃ確かに容赦のない暴力表現(北米版とはだいぶ違うみたいだけど)で、ストーリーだって暗く悲しいものです。万人受け
でもそんな瑣細な問題はこの作品の前では何の意味もない。そんなものは馬鹿げてる。
嗜好品だからって少数の名作も押さえずに映画を語る人がいないように、逆に言えば映画を語る人が嗜好性を盾に名作を無視しないように、避けて通れないものが名作と呼ばれるものです。
そして The Last of Us は次世代でも長く並ぶ者のない名作になるに違いない。



ゲームとしてはメタルギアソリッドのステルスとバイオハザードの良いとこ取りみたいな感じでしょうか。
ステルスは弾薬の節約といった要求から必要なものですが、それだけでは乗り切れないようないやらしい敵の種類と配置がなされています。
このゲームが熱いのは、ステルスコンバットに失敗し、発見されてからのドラスティックな展開にあると思っています。
リロード中に間合いを詰められ、敵を近接攻撃中に捕獲、そのまま敵を盾にしつつ、空の銃で脅して他の敵から間合いを広げ、物陰に隠れて武器を作る。
ステルスに失敗しても「あーやり直しやり直し」とはならない。どうやって反撃に転じるかを考えるのがとても楽しい。

ストーリーの途中、操作できるキャラクターは何度か変わります。
メインは50代のおっさんジョエルですが、他もそれぞれ新鮮で、操作しているだけでとても楽しい。
他の TPS や FPS のような強力な一体感ではないけれど、バイオハザード5までのような間怠っこしさではありません。
なんと言えばいいのでしょうね。飽くまで他人を操作しつつも、ここぞというところではピタリとハマる感じがあります。他の三人称アクションと比べても大変に高い水準ではないでしょうか。

ゲームの舞台は正体不明の病原菌のパンデミックにより、人類の六割が死滅した世界です。
荒廃した世界には小動物や生き残ったならず者ども、そして感染者がいます。
TLOUS の最も特筆すべき特徴は、その美しく荒廃した世界の全てであります。
グラフィックスの奇麗なゲームは他にも沢山ありますが、情感や存在感をここまで隙なく緻密に練り上げたゲームは間違いなくこれだけです。

その繊細さの割に、贅沢に物語は進んでゆきます。
斜めになったビルディング、生き残りの生活圏、水没したホテル、都市のアパート、雨の夜、美しい渓谷、発電所、下水道、湖畔、港、住宅街……。
ここまでで特に好きなシーンはオープニングのパンデミック発生のシーンと、渓谷シーンですね。渓流の美しさと風に揺れる針葉樹の枝が見事です。
特筆すべきは影の表現でしょうか。

影というのは CG において一つのテーマであります。
特に空気感というものを表現する上で、パーティクルなどと共に重要な要素です。
動的な影を描画することは必ずしも難しくはありませんが、空気による散乱や間接光などによる柔らかいライティングなどを考慮すると殆ど天井知らずの難しさになってしまいます。
シャドウボリュームによるダイナミックシャドウではくっきりとした影を表すことができて宇宙空間などのシーンならこれでよいのですが、地球上での表現ではマルチパスのシャドウマップ生成、ポストエフェクトの追加といったパスを経て最終的なシーンにブレンドされます。
これは一般に非常にバス帯域を消費するアイデアでして、今のところはいかな GPU といえど慎重なシーンの設計と調整が必要になります。そうでなければフレームレートは 20fps, 15fps, 10fps, 8fps, 6fps…とどんどん低下していきます。

奇麗な影をシーンに合った形で提供するのがどれほど難しいかということですよ。リアルタイムでは計算量の問題があり、プリレンダーだって実際相当な悩みどころです。
バイオハザード6のホワイトハウスのシーン、強力なサーチライトが作り出す動的な影もかなり印象的でしたね。
更に TLOUS の場合、空間を満たした黴の中を探検し、戦うシーンも随所にありますので、技術的にも驚きの連続であります。

このテクノロジーはレジスタンスシリーズに始まり、これまで Uncharted シリーズなどの素晴らしいゲームを生み出してきた Naughty  Dog, そして Insomniac の活躍で円熟期を迎えました。
PS4 の世代になってもこれほどのクオリティのゲームが出てくるのはまだ少し先のことでしょう。
これをやらずにこの世代のゲームを語るのは間違っている。
好みの問題じゃない、そんな些細な問題はこの作品の前では馬鹿げて見える。押さえておかなきゃ話にならない。来年も再来年もこの先ずっとリファレンスになる——紛れもない名作であります。
……まだクリアしてないけど。

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